やはり確定拠出年金(iDeCo)は不要と思う理由
一時期よりは下火になった気もしますが、どこに行ってもおススメされる確定拠出年金(iDeCo)について、思うところを書いてみます。
運用益が出るかどうかは、神のみぞ知るところですので、運用益は別にして、まずは制度としての節税メリットにフォーカスして考察します。
結論から言うと、私は基本的には、世間で騒がれるほどのメリットはないと思っています。
細かな制度内容には触れておりませんので、詳細は公式サイトをご覧ください。
イデコ公式サイト
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/
そもそも政府が確定拠出年金(iDeCo)制度を導入した目的は?
新しい制度が導入される場合、政府・国にメリットがある場合がほとんどです。ただし、その本当の理由は表に出てきませんので、政府の立場でよく考えてみる必要があります。
そもそも政府がこの制度を導入した目的は「限界を迎える年金のリスクを個人に転嫁する」というのが表向きの理由とされていますが、「個人資産を60歳までの数十年間、株式・債券市場に固定する」のが主目的と思われます。膨らむばかりの銀行貯金を、少しでも投資に回してもらい経済を刺激したい、という政府思惑ですね。
これは個人にとって得なのでしょうか?答えは否。
基本的には投資素人がリスクをとるので元本割れリスクを抱えることになります。「目先の税金を減らしましょう」というキャッチフレーズでバランスを取ろうとしていますが、やはり目先の利益で個人を釣っているように感じます。
節税効果は本当か?
確定拠出年金(iDeCo)の節税効果は大きくは「掛け金の全額が所得税および住民税計算のベースとなる所得から控除」「運用益が非課税」の二つですが、それぞれ本当に節税効果があるのか考えてみます。
結論だけ書いてしまうと、年収750万円程度のサラリーマンで、退職金が1500万円以上有る場合、30年で55万円の節税効果しかありません。元本割れリスク・資金固定リスクを背負ったうえでこれでは話になりません。
個別にみてみましょう。
1. 運用中の運用益が非課税
運用益は途中年度では非課税、最後に「課税」です。
NISAでは最後まで非課税ですが、iDecoは最後に課税される場合が多い事をしっかり認識する必要があります。
2. 掛け金が全額所得控除=所得税・住民税が減る
年収750万円のサラリーマンは月額1.2万円の拠出が可能です。年間14.4万円の掛金となり、これが所得から控除されるので、所得税+住民税の税率30%ベースで年43,200円が節税メリットとなります。
この数字だけ見ると非常に魅力的ですよね?
ただし、「年14.4万円で4.3万節税なので、それだけで年率30%で運用したことになる」というのは嘘です。
プロのファイナンシャルプランナーでも、上記の間違ったうたい文句で攻めてきますので、十分気を付けてください。
理由は後述の通り「出口戦略」が考慮されていないからです。
覚えておきたいのは「掛け金も含めて運用益が課税(軽減税率有)される」ということです。
また、その課税率も軽減税率を享受できる可能性は低く、また、投資総額に対する年利率で考えるとかなり低い運用率になってしまいます。
これが、「確定拠出年金(iDeCo)は目先の税金が減るだけで、税の繰り延べをしているだけ」と言われる所以です。
最終的な課税額と利益率
最終的な運用益の課税には退職所得控除・公的年金等控除が利用できます。
ただし、退職所得控除は1500万円までです。上場企業のサラリーマンであればこの程度の控除枠は退職金で使い切ってしまうと思います。
次に年金で受け取る場合の公的年金等控除ですが、これも上場企業のサラリーマンであれば、国民年金・厚生年金・企業年金(確定給付型企業年金)などの受け取りがありますので、年金控除枠も使い切ってしまうと思います。
そうなると、一時金あつかいで受け取ることになり、通常の1/2の税率で課税されることになります。
もし受け取りの60歳時点で、課税所得900万円(年収1100万円程度)以上の場合、所得税33%+住民税10%になります。
一時金扱いですと、1/2 x (所得税率33%+住民税率10%) = 21.5%で課税され、通常の投信運用益20%課税よりも大きくなってしまうため、むしろ税金が増える事になります。
これより下の年収であっても、課税所得450万以下(10%+10%)ぐらいにならないと大した節税効果はありません。
私の場合のシミュレーション
私の勤める会社は確定給付型企業年金をやっているので、確定拠出年金(iDeCo)の限度額は月12000円です。節税効果は30年で130万円程度、掛金総額は450万円程度になります。
上記の通り退職控除も年金控除も基本は使えないので、一時金での受け取りとして1/2課税とすると、450万円 x 1/2 x 33% = 75万円が最後に支払わなければならない税額です。よって、運用益0だとすると130万円の運用中節税マイナス最終課税75万円で、差し引き55万円の節税が出来たという事になります。
元本割れリスクを背負ったにもかかわらず、毎月1.2万円の投資で30年で55万円益はあまりにも少なすぎますし、これなら他で運用したほうが良いと判断しました。
その他のメリット・デメリットは?
メリット
その他のメリットも無いわけではないので以下説明します。
・目先の税金が減るので、現役世代で手取りが増えるのはGoodです。ただし、年4~5万円程度なので誤差と感じる方も多いのではないでしょうか。
・税の繰り延べはインフレ対策としては有用です。基本的にインフレが続くと仮定すると、上記シミュレーションの最終税額75万円は、30年後には現在の価値より少ない価値になっていると考えられるからです。ただし、総額のインパクトが小さいので、完全な対策にはならないと思います。
・死亡時は死亡控除の対象となりますが、普通はほかに資産もあるのであまり意味なしです。相続対策はもっと良い方法があります。
デメリット
節税効果の実態は前述しましたが、その他のデメリットも見てみましょう。
・60歳まで払い出し不可で資金を固定されてしまうのがかなりいたいです。減額や払込停止は可能です。
・運用失敗の場合、元本割れの可能性あります。
・加入期間が長ければ年利回りは下がります。掛け金の所得控除は、税の繰り延べになる可能性が高く、目先の節税を利回りと考えるのはおかしいという事は前述した通りですが、仮に途中年度毎に一時的な利回りが発生している、として捉えた場合も、その利回りは低いです。なぜかというと、節税はその年に投入した掛け金だけから生まれますので、掛け金総額が大きくなってくると、全体の利回りとしてはかなり低いものになるためです。例えば、掛け金月1.2万円を30年間続ける場合、初年度は利回り30%程度ですが、最終年の単年では450万円の掛け金に対して、4-5万円程度の節税効果しかないため、単年利回り1%程度となってしまいます。
・将来的に特別法人税(年1.173%)がかかる可能性があります。現時点で平成32年3月31日までは凍結されていますが、これが将来的に凍結解除され、課税される可能性も否定はできません。
・住宅ローン減税でそもそも控除できる税金が少なくなる可能性、60歳以降に受け取った際の国民健康保険料への影響なども考慮する必要が有ります。詳しくは別の機会に記事にします。
補足事項
・会社役員でも加入可能です。一般的には社員と同じく月12,000円が最大掛け金とります。
・海外赴任する場合、日本の勤め先にて厚生年金保険を継続して加入することができる場合は継続可能です。
結論
何歳で定年になるかは予想できず、また今後の年金支給開始年齢の変更の可能性などもあるため、非課税枠を使い切れるかどうかはかなり怪しいと思います。また、確定給付年金(これも年金(受給開始時期も含め)or一時金の検討は必要)で控除枠全て使い切るとも考えられるますので、出口戦略が不確定のままで投資するのは不安が残ります。
私個人としては、完全に老後資金として確保され60歳まで引き出す予定の無い余裕資金があり、それで普通に投資信託を買うのであれば、確定拠出年金(iDeCo)の方が良いと思います。ただし、私がそのようなお金が確保できるのは、家購入後と思われるので、少なくとも30代前半では利用する価値はないと思っています。
これらのリスクを理解した上で、どうしても利用してみたい場合は、何歳頃始めるのが良いか考えるべきです。この辺りの考察も別の記事にしようと思います。